HNKスペシャル

５月４日。そのとき、わたしは金石灘から帰り、大連賓館のスナック大和でアイス・コーヒーを飲んだあと、「盛和道」でなまこを食べ、再び、大連賓館に帰って来ていた。そして、することもないので、日本から持ってきた本などを読んでいたが、それも飽きてきて、ＴＶを付けてみることにした。昨日から気付いたのだが、大連賓館では日本のＮＨＫを見ることができ、熊本大震災についてのニュースを多くやっているのを見た。もちろん、・・・というべきかどうかは知らないが、中国のニュースでは熊本大震災には一切、触れられていなかった。

時間を見ると夜の１０時を過ぎていた。

（ニュース番組くらいしかやってないだろう）

そう思いながら、ＴＶのチャンネルをＮＨＫに合わせると、するとなんとＮＨＫでは政治をテーマにした生放送をしていた。「ＮＨＫスペシャル １８歳の質問状」というタイトルで１８歳選挙権をテーマとして、若者に選挙について考えてもらう番組だった。武田真一アナウンサーが司会を務め、ゲストには現職の与野党の国会議員、タレントの高橋みなみ、武井壮、渡辺真理奈、その他、１０代の若者たちがスタジオに集まっていた。

番組では視聴者も参加できるようにゲストやスタジオの若者の『いい！』と思える意見にはＴＶのリモコンのdボタンを押して、投票することができたり、ツイッターからも投稿ができるようになっていた。

わたしは活発な意見交換が行われることを期待しながら、その番組を見た。

しかし、そんなわたしの期待など見てすぐに無残に打ち砕かれた。

　活発どころではない。政治家たちは、

『××××××××××』

　と、中身のない当たり障りのないことをいい。そして、必ず、

『・・・で、しょうか？』

　と、最後にこの言葉を付け加える。

　どの政治家もだ。

『×××××××××・・・でしょうか？』

　司会者は次の政治家に意見を廻す。

『はい。誰々さん』

『×××××××××・・・でしょうか？』

『はい。誰々さん』

『×××××××××・・・でしょうか？』

　どの政治家も若者に対して、まったく中身のない話をして、最後に、

『・・・でしょうか？』

と付け加えて、終える。

なんともつまらない内容だ。そして、薄ら寒い。

そして、もっとさらに薄ら寒かったのは視聴者だった。

政治家が、

『・・・でしょうか？』

　というたびにdボタンが押されていくのである。

『・・・でしょうか？』

　＠＠＠＠＠＠＠・・・・押されたｄボタンの数が増えていく。

『・・・でしょうか？』

　＠＠＠＠＠＠＠・・・・押されたdボタンの数がどんどんと増えていく。

　わたしには、内容も何もない政治家が、

『・・・でしょうか？』、『・・・でしょうか？』

　と、云っていることのどこが、『いい！』のかさっぱりわからなかった。

　この視聴者たちは一体、政治家たちに何を求め、そして、

『・・・でしょうか？』という、当たり障りのない内容のない意見の何がよかったのだろうか？

　もちろん、このような視聴者が全員若者とは限らない。

　わたしのような中年や老人もいただろう。

　しかし、テーマは『１８歳選挙権』だ。

　こんな中身のないことでよいのだろうか？

　政治家よりもｄボタンを押し続けている視聴者のほうが、よっぽど薄ら寒く感じた。

　番組では最後に、番組を見て、『納得できた』、『モヤモヤする』の２つの感想のアンケートを視聴者に求めた。

　結果は『納得できた』が３割。『モヤモヤする』が７割。ーと、『モヤモヤする』が圧倒的だった。

　視聴者のほとんどはモヤモヤしていたようだ。

　が、わたしはもっとモヤモヤしていた。

（もっと白熱した議論をしてくれ！）

　と、わたしはＮＨＫを見ながら、最後まで思い続けた。