大韓航空

（大韓航空に乗って、韓国経由で大連まで行くのか？）

格安航空チケットを買った旅行会社から、それを知らされた時、わたしは少なからず、戸惑った。何せわたしは韓国ドラマをたびたび観たりはするが、韓国語については一切、できない。それに大韓航空機爆破事件やナッツ姫の事件もあって、大韓航空についての印象も正直、あまりよくなかった。・・・おっと、知らないひとのために云っておこう。大韓航空爆破事件とは１９８７年１１月２９日、北朝鮮工作員の金賢姫と金勝一によって、大韓航空機が爆破されたテロ事件で、当時、ＴＶ、新聞、マスコミはこの事件を連日報道、北朝鮮の異様性と逮捕された工作員金賢姫の美貌は巷でも話題の的だった。わたしもこの事件と金賢姫のことは今でもよく覚えていて、大韓航空と聞くと金賢姫の顔が浮かんでくるくらいだ。そして、ナッツ姫の事件とは２０１４年１２月５日、大韓航空機に乗ってアメリカから韓国に帰国する予定だった大韓航空の副社長趙顕娥が、飛行機が滑走路へブッシュバックするなか、客室業務員が出したナッツに対して、『ナッツの出し方が悪い』と激昂したうえ、説明しに入ったチーフバーサーが、ナッツの出し方のマニュアルを見せられなかったことに対して、さらに激怒。チーフバーサーに『飛行機を降りろ！』と云い、チーフバーサーを降ろすために飛行機を搭乗ゲートまで引き返させた事件のことで、「ナッツリターン」と呼ばれている。

なんにせよ、縁起の悪い航空会社で、大連に行く前、友達の下山君に『飛行機乗ったら、爆破されたりして』と冗談を云っていたくらいだ。

ところが、いざ乗ってみるとこれが実に機内サービスがよかった。機内のサービスはすべて、日本語、中国語、英語、韓国語の４ヶ国語の対応になっていて、スチュワーデスさんの対応も日本語だった。座席の前にモニターがあり、映画が見れたり、音楽を聞けたりできるが、これも４ヶ国語の対応になっている。

中国の航空会社のサービスとはえらい違いだ。中国の航空会社は中国語と英語だけで、少なくとも日本語がまったく通じない。座席で映画が見れたりもしない。

機内食はサンドイッチと軽めだが、それも午前１０時と中途半端な時間なので、変に重たいものを食べる必要もなく、サービス上、ぜんぜん問題ない。

実に快適な空の旅だった。

飛行機が仁川空港に到着した。乗り換えるにはどうすればよいのか迷ったらどうしようと思っていたが、空港内も４カ国対応になっているので、乗り換えの搭乗ゲートまで迷うことなく、スムーズに行けた。すべてが順調だった。

時間まですることもないので、空港内をぶらつく。空港内も綺麗だ。

雰囲気はなんら日本と変わらない。

そろそろ搭乗時間なので、搭乗口で待つことにした。

大連行くとは云え、周りは中国人だらけで、日本人はわたしひとりらしかった。

そういえば、空港内も中国人だらけだった。

それどころかどこもかしこも中国人だ。

日本では��爆買い″と云って、さも日本だけが一人勝ちしているような報道だが、韓国に��爆買い″に来ている中国人もかなりいることがわかる。

韓国では��爆買い″を何と云うのだろう？

それはそうとさっきから、わたしの近くにいる幼い中国人の姉弟が、盛んに歌を即興の歌を唄っている。

姉は唄う。

『ラララ〜！ラララ〜！１点半（１時半）〜！ラララ〜！ラララ〜！１点半〜！』

　そういえば、出発は１時半だった。

『ラララ〜！ラララ〜！１点半〜！』

　幼い姉は高らかに唄い。さらに幼い弟は姉といっしょに踊る。

『ラララ〜！ラララ〜！１点半〜！』

　さっから、ずっとこの繰り返した。

　親も周りも笑ってる。

『ラララ〜！ラララ〜！１点半〜！』

　わたしも姉弟の即興の歌と踊りを微笑ましげに見つめる。

『ラララ〜！ラララ〜！１点半〜！』

（・・・・・・・・）

『ラララ〜！ラララ〜！１点半〜！』

　わかったよ！