Hoffa
ホッファ

  ◎ジミー・ホッファ(1913−1975)。元全米トラック運転手組合会長。
   ◎ジャック・ニコルソンの主演映画「ホッファ」の主人公。

 
 ジャック・ニコルソンと聞いて、あなたなら、まず、真っ先にどんな映画が頭に思い浮かぶだろうか?

ある程度、映画に通じた人間なら、「イージー・ライダー」(69)、「カッコーの巣の上で」(75)は絶対、はずせないだろうし、「チャイナタウン」(74)、「郵便配達は二度、ベルを鳴らす」(81)、「恋愛小説家」(97)、「シャイニング」(80)、「男と女の名誉」(85)、「愛と追憶の日々」(83)なども頭に思い浮かんだりするだろう。

例え、映画ファンでなくても「バットマン」(89)のジョーカーくらいは思い浮かぶに違いない。

その他にも「イーストウッィクの魔女たち」(87)の悪魔役や「マーズアタック!」でのノリノリの怪演も捨てがたいし、最近では「ディパーテッド」(2006)や「最高の人生の見つけ方」(2007)っていうのもある。こうして、指折り数えてみても、とてもじゃないが、片手では足りず、もし、仮に筆者がジャック・ニコルソンの出演作でNO.1はどれ?″などという愚問を投げかけられたら、とてもじゃないが、即答では答えられない。

 三日三晩かけても答えられないだろう。

 それほどに幅広い役柄を演じ、なおかつ、名作傑作も多いニコルソンであるけれども、そのニコルソンのあまり知られていない隠れた佳作に「ホッファ」(92)という作品がある。

「ホッファ」とはいかなる映画か?

それより、まず、「ホッファ」とは何なのか?

お教えしよう。

ホッファとはー1957年から1971年まで、全米トラック運転手組合(チームスターズ)の会長として、絶大な力を誇ったジミー・ホッファ(ジャームズ・リドル・ジミー″・ホッファ)のことーで、映画はホッファの腹心の部下となるチャロ(架空の人物)の回想という形で、ホッファがチームスターズを立ち上げるところから、マフィアの力を背景に全米トラック運転手組合の会長にまでのしあがったものの、1962年、マフィアに対する資金提供、不正融資など年金基金の悪しき運用について、ロバート・ケネディと対立、公聴会で、ロバート・ケネディの父、ジョセフ・P・ケネディが禁酒法時代にマフィアと手を組んで巨万の富を築いたことまで持ち出して反論するが、1967年、遂に懲役13年の実刑判決を受け、刑務所に入所、実刑中、ケネディ兄弟の暗殺があり、選挙資金を出す条件でニクソンを支持したため、ニクソン大統領の特赦が下り、1971年、晴れて出所となる。が、しかし、それは10年間、組合活動にかかわらないという条件付きの特赦であり、投獄中にホッファの持っていた権益は後任のフィツシモンズら、かっての部下たちにすっかり奪われてしまっていた。また、もはや金づるでなくなったホッファはマフィアからもうるさい存在でしかなくなっていた。あくまで復権にこだわり続けたホッファはそのことでマフィアを脅すが、1975年、最後はマフィアに暗殺され、遺体はトラックでどこかに運び去られていくーまでを描いている。

ホッファ暗殺説は有力であるが、実際は消息不明で、遺体はまだ見つかっていない。

わかっているのは1975年7月30日、レストランに愛車を放置したまま、忽然と姿を消してしまったーということだけである。

 そして、ホッファの失踪について、捜索は今も続けられてる・・・。

筆者はこの映画を1993年か94年、まだ大阪にいた頃、レンタルビデオで借りて観て、それで初めて、ホッファという人物のことを知った。そして、調べてみるとかなり強烈な人物であることがわかった。これまでジャック・ニコルソンはジョーカーなどの怪人役をはじめ、なにかとくせの強い役柄を随分と演じてきているが、実在した人物でこれほどアクの強い人物を演じたのはおそらく初めてのことではなかっただろうか?

またニコルソンでなければ、演じられなかった役柄でもあった。

60年代〜70年代のアメリカの重要人物を主人公にした映画で、ウォーターゲート事件を描いた「ニクソン」やJ・F・ケネディ暗殺事件を検証した「JFK」、初代FBI長官J・エドガーの真実に迫った「J・エドガー」、過激な言動で黒人解放を訴えた「マルコムX」などとともにアメリカ現代史のひとコマを感じさせてくれる作品である。


   2015年7月7日