みん かつ
民活
◎民間活力の略。
小泉元総理の靖国参拝がメディアで大きく取り上げられ、何かと話題になっていた時代、新聞には政冷経熱という言葉がよく載っていた。政治は冷たい関係だが、経済は熱い関係だという意味で、中国の胡錦濤元国家主席が日本と中国との関係を指して云った言葉がそもそもの由来だ。当時、中国は北京オリンピックや上海万博によるバブルの真っ最中で、それに伴い日中貿易は拡大し続け、２００４年には日中貿易の総額が日米貿易を上回るとこまで来ていた。また日韓関係はというと２００２年の日韓共催ワールド・カップ、２００４年の冬ソナブームなどで、日本から韓流とグルメとエステ目当てに韓国に行くおば様、お姉さまたちがどっと増え、韓国経済の急成長の要因などがマスコミで語られるようになった。このような経済成長を背景にして、日本に中国や韓国からやって来る観光客もうなぎ登りに登り続け、日中、日韓関係の経済交流はどんどん活発、ヨン様はやって来る、女子十二楽坊はやって来る、SMAPの草彅剛はチョナン・カンになる、吉本は中国に進出する、・・・といった具合にアジア全体に熱気が溢れていた。あの頃の中国や韓国には勢いがあった。
その一方で、２０００年を越えたあたりから、韓国や中国で反日デモが多発するようになる。韓国の反日デモについては、筆者はテレビで日本の政治家の写真を燃やしたりするシーンしか観てなく、韓国に住んだこともなければ行ったことすらもない、なので、それが大規模なのか小規模なのか、韓国全体の世論なのか、そうでないのか、韓国人というと日本でキムチ売っているオモニくらいとしかしゃべったことがないので、韓国の世相や韓国人の気質といったものはまったく知らない。はっきりとしたことは韓国に行ってみるか、韓国人にインタビューでもしないと何とも云えない。が、中国のことなら、それなりにわかる。中国では２００３年、２００５年、２０１０年、２０１２年に大規模な反日デモが起きている。２００３年の西安留学生寸劇事件、２００５年の小泉元総理の靖国参拝、２０１０年の中国漁船衝突事件、２０１２年の尖閣諸島国有化宣言である。これらの中国の反日デモについてよくよく考えてみると反日デモが起きているのは小泉政権と民主党政権下で起きていることになり、その原因は西安留学生寸劇事件を除けば、靖国参拝と尖閣諸島問題ということだが、靖国参拝なら、去年の暮れ、安倍総理もしている。
不思議なことと云うべきなのか、そのときは反日デモがまったく起きなかった。
はたして、何故、反日デモは起きなかったのだろう？
どこぞのネットユーザーが書いたように〝ようやく日本の強さがわかった″のか？
それとも中国の民衆は小泉政権や民主党政権は嫌いだったが、安倍政権は好きだから反日デモはしなかったと受け止めればよいのだろうか？
そうだ！！きっと、そうに違いない！！
中国人は安倍さんが大好きなんだ！！
中国人も大好き、安倍総理！！
・・・まぁ、これは単なるブラックな冗談で、安倍総理が靖国参拝をしても反日デモが起きなかったといっても中国政府、韓国政府は連日、参拝批判を続けたわけで、それ以前もその後も中国、韓国の対日批判は日に日にエスカレート。それに反応して、日本では反韓反中の本がベストセラーになったり、ネットでは反韓反中の書き込みばかりと安倍政権の今、小泉時代よりさらに日中、日韓関係は悪化しているかのように思われる。
が、しかし、このようなことは民間レベルにおいては実に頭の痛いことに違いない。
何故ならば、筆者はときおり、面白そうなのがあれば、GYAO！で韓国ドラマなどを見たりするが、韓国ドラマに出てくる日本のイメージというのはアニメであったり、経済大国であったり、これといって悪いイメージでもないし、悪者としては倭寇や日本人ヤクザなどが出て来たりもするが、型にはまったような悪者かというとそうでもない。ニュースだけ見て、韓国＝反日と思ったら、それは全然違う。韓国ドラマに出てくる日本人を日本のドラマで例えると、中国人というとブルース・リーやジャッキー・チェーンではなく、ニセモノ大国からやって来た何やら怪しげな人達という描かれ方をされがちであるが、それでも別にそれほど悪意を持って描かれているわけではないのとさほど変わらないように思われる。
その中国にしても反日デモが吹き荒れた翌年、筆者は上海に行っているわけだが、少なくとも上海にいる間、日本や日本人に対する反感といったものを肌で感じるようなことはこれっぽっちもなかった。一面にホワイトハウスで安倍総理とオバマ大統領が会談している写真がでかでかと載った新聞を買おうと新聞屋のおじさんに『いくら？』と尋ねると『八毛！』と怒っていたり、リニアに乗った後、中国人の掃除のおばさんらが、『わたし、日本語知らない』と笑っていたり、そこらじゅうで中国人の若人らが携帯持って、うろうろしていたり、東方明珠塔で『彼は綺麗な女のひとが好きだ』とかなんとか云われたりはしてたけど・・・。
それを考えれば、民間レベルではけっしてバカではないということだ。
民間にやらせれば、バカな政治問題などにはけっしてならない。
政治問題にしているのはそれこそ各国政府の要人たちだ。
そもそも日韓、日中間がこじれている靖国参拝問題そのものがなんだか変だ。
靖国参拝問題というと昨今では国際問題として捉えられ、内政干渉だという声が聞かれたりもするが、靖国参拝問題の歴史をみると国際問題より先に国内問題として始まっていて、中国が抗議する以前から、A級戦犯が合祀された靖国神社への総理や閣僚の参拝は問題視されている。だから、問題は何も中国の抗議から始まったわけでもないし、それより何より問題なのは１９７８年にA級戦犯が合祀されてから、肝心の天皇陛下が参拝していないということだ。天皇陛下が戦没者の慰霊に行けないというのであれば、日韓、日中の政治問題以前の問題ではないだろうか？これには天皇陛下がA級戦犯をこころよく思っていなかったという説もあれば、いや、そうではないという説もあり、天皇陛下自身がはっきりとそのことについて語っているわけではないので、A級戦犯について、どのように思っていたかについては何とも云えない。が、ただ、先の大戦でさんざん政治利用された陛下がA級戦犯が合祀された靖国神社に参拝するのが政治問題になるというのがわからなかったなどということはないのではないか？
政治問題で天皇陛下が慰霊に行けない靖国神社とは何なのか？
何のための戦没者慰霊なのか？
天皇陛下が国内外の戦争被害者を慰霊することこそが平和日本の象徴としてあるべき姿ではないのか？
それなのにそのことに触れもせず、政治家が国の内外で批判をされながらもやたらと靖国参拝にこだわるのは要するに遺族の票が目当てなのではないかと勘ぐってしまう。
だから、筆者には小泉元総理や安倍総理や閣僚たちがこぞって靖国参拝するのは信念からではなく、自民党株式会社の社内行事が何かにしか見えて仕方がない。
さしずめ、安倍総理は自民党創業家一族のお坊ちゃん重役といったところか？
要するにそれだけのことなのだ。
もし安倍総理が政治家の家系に生まれていなかったら、靖国参拝など露ほどにも考えなかったに違いない。
・・・まぁ、それでもそのあたりのことについて安倍総理は正直に顔に出るので、個人的には好意的に思ってはいるが・・・。
小泉元総理の靖国参拝から、１０年余りほど経った今年の２月、東京都知事選で脱原発を訴えた小泉・細川W元首相連合が共産社民の推す候補にも及ばなかった。脱原発そのものは悪いということではない。むしろ、原発のような非自然的なエネルギーはないほうがいいと思っているが、かっての小泉旋風が今回、起きなかったのは１０年ひと昔といったところだろう。
また自衛隊の元航空僚長が慰安婦問題はない、南京大虐殺はないと訴えて、60万もの票を集めたと話題になったが、仮にもし東京都知事に当選していたら、同じように慰安婦問題はない、南京大虐殺はないと主張し続けたのだろうか？
慰安婦問題というと何故かなにかと軍による関与と強制性を認めた河野談話を引き合いに出して、慰安婦問題はないと云ってる方々もいる。従軍慰安婦問題については軍が強制連行をしたという裏付けの証拠がないと云われてもいるが、そもそも軍が強制連行といった戦争犯罪に関するような証拠を文書として残すわけもないし、韓国はどうか知らないが、少なくとも多くの慰安所が劣悪な環境にあったというのは事実だろう。慰安婦問題や南京大虐殺があろうがなかろうがアジアには多大な損害を与えたという事実も事実以外の何者でもないではないか。
これは自虐史観でも何でもなく、戦争における犯罪という事実で、英霊だの聖戦だのという言葉で美化したところで、交戦中、日頃の恨みから一等兵、二等兵に後ろから撃たれて死んだ上等兵も少なからずいたらしい。一事が万事、それが先の大戦で日本軍を覆っていた実態ではないだろうか。
筆者は反韓反中の時代に育っていない。携帯もなかったし、他国の情報も必要以上に入ってくる時代でもなかった。だから、韓国や中国といえば、食いものや買春の印象しかなく、話題といえば、〝あの焼肉屋はうまいかまずいか？″、〝あのラーメン屋はうまいかまずいか？″とか、〝本場韓国の焼肉が食いたい″、〝中国に行って、本格中華を食ってみたい″とか、〝韓国のアガシはキムチ臭いか？″、〝中国の姑娘は本当にモチ肌か？″とか、それくらいしかなかったのだが、それで不幸だと思ったことはなかった。
どちらかといえば、韓国や中国に憧れを持っていたくらいだ。
経済が悪くなればなるほど、ナショナリズムが台頭するのはどこの国も同じだ。
かって日本が世界第２位の経済大国に躍り出たとき、石原慎太郎の「NOといえる日本」という本が売れるに売れた。当時、石原慎太郎は反米本を書いたことにより、国内やアメリカからバッシングされたが、そのバッシングされた石原慎太郎が今やまるで『反中反韓であらずんば、ひとにあらず』―かのような妙な国家主義の片棒を担いでるありさまだ。同じように、今、韓国に行けば、韓国の石原慎太郎が、中国に行けば、中国に行けば、中国の石原慎太郎がいるに違いないのに・・・。
そして、経済大国になった後の不況の次にやってくるのが偏狭なナショナリズムであるところも似ている。
偏狭なナショナリズムの先にあるのは戦争だが、観てるだけの戦争映画と違って、実際の戦争となれば、銭勘定なしでできる戦争なんてものはない。戦争になれば、まず何よりも経済体制が戦時経済になってしまうだが、はたして、日本にしろ、中国にしろ、韓国にしろ、戦時経済でやっていけるのだろうか？日中戦争、あるいは日韓戦争が起きたら、戦時経済の下で好景気がやって来るとでも思っているだろうか？日本が儲けた戦争など朝鮮戦争くらいなものではないのか？
それだって日本が参加したわけでもない。対岸の火事でぼろ儲けしただけだ。
だから、日本が儲けられる戦争は中韓戦争くらいしかない！
もちろん、これはブラックな冗談だけれども・・・。
誰も儲からないバッシング合戦。
日中、日韓関係を悪化させているのは一体、誰なんだと問いたい。
２０１４年３月４日