のも　　　　　　ひでお
野茂英雄

　　　◎プロ野球選手（近鉄→ドジャースetc.etc）。１９６８年８月３１日生まれ。大阪府出身。
　　　◎通算２０１勝（日本７８勝。アメリカ１２３勝）。
　　◎トルネード投法を武器に「ドクターＫ」の異名をとる。

　野茂が近鉄からデビューした１９９０年、このとき、筆者は中国の大連にいたので、野茂の大活躍について、日本でどれだけ騒がれていたか、ぜんぜん知らない。留学以前に知っていたのはドラフト前からトルネード投法が随分と話題になっていて、ドラフト会議では史上最多の８球団から１位指名、鳴り物入りでプロに入ったということだけだった。ただ、大連でも日本の新聞は読めたので、野茂が勝った翌日のスポーツ欄に「＊＊三振」、「ドクターＫ」、「トルネード」といった文字がところ狭しと躍っていたのはよく覚えている。この年、野茂は５試合連続２桁奪三振のプロ野球新記録を作り、１８勝と２８７奪三振の好成績をマーク、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率と投手部門のタイトルを総なめにした他、ベストナイン、新人王、沢村賞、ＭＶＰを受賞とものすごい大活躍だったようだ。翌年も１７勝、その次の年もまたその次の年も１８勝、１７勝と順調に勝ち星を重ね、４年連続で最多勝と最多奪三振を記録する頃には野茂は球界を代表する大エースと呼ばれるようにまでなっていった。

　しかし、筆者の記憶ではその華やかな記録のわりに野茂はスター性に乏しかったように思える。体の大きさとは対照的に童顔でのっぺりした顔立ち、インタビューでも当たり障りのないコメントばかりで、どうひいき目にみても面白みに欠けていた。

　野茂が再び注目されるのは１９９５年、大リーグへの挑戦を表明してからで、所属していた近鉄とすったもんだのすえ、ようやくロサンゼルス・ドジャーズと契約。ポスティング制度もＦＡもなかった当時、大リーグへの移籍は現在よりもはるかに困難で、日本球界を引退してのメジャー入団だった。日本人としては村上雅則（一般にはほとんどその存在を知られていなかったが、野茂がメジャー挑戦すると一躍脚光をあび、漫画にまでなった）についで２人目。メジャー入りしてからの野茂については云うまでもなく、現在では大リーグで活躍する日本人選手のパイオニオ的存在とされている。日本人投手として、唯一、大リーグで１００勝以上している野茂だが、そのなかでももっとも印象的な試合といえば１９９６年のロッキーズ戦と２００１年、オリオールズ戦で記録したノーヒット・ノーランだろう。１９９６年のときのノーヒット・ノーランなどは、それこそニュースの時間になるとＴＶが割れんばかりの大騒ぎだったが、２００１年（所属はレッドソックス）のときにも当時のアメリカ大統領ジョージ・Ｗ・ブッシュが、定例会見で『昨日の野茂には興奮した・・・云々』と野茂のノーヒット・ノーランを小ネタに使ったぐらいだ。仏頂面の野茂もさすがにこのときは��どうだ！″とばかりに鼻高々だったろう。

　が、しかし、野茂自身の選手としてのピークはこのあたりが終わりに近い。そして、筆者が野茂の存在を強く意識するようになるのも選手として最後の華を咲かせる２００２年〜２００５年のことで、よく観ていた「サンデー・モーニング」（ＴＢＳ）の「スポーツご意見番」コーナーでは、（投げ）勝った試合で、よく『あっぱれ！』、『あっぱれ！』と張本勲や今は亡き大沢親分から、『あっぱれ！』が入ったものだ（それにしてもあの頃の大リーグは野茂に松井にイチローに新庄といて、随分と面白かった。ひょっとするとあれが野茂を含めた日本人大リーガーの全盛時代だったということになるのかな〜とふと思ったりもする）。

野茂の最後の雄姿は２００５年に２００勝を達成したときだろうか？それを最後に野茂の雄姿も見られなくなり、２００８年にはそのとき、所属していたカンザスシティ・ロイヤルズから戦力外通告。すると東北楽天イーグルスが野茂獲得にのりだし、日本球界に復帰かとも思われたが、交渉がうまくいかず、引退。「スポーツご意見番」で引退する直前ぐらいの野茂の体を見た張本が『太り過ぎですよ。こんなにブクブクじゃ、投げられませんよ』と云っていたのが記憶に新しい。それと引退したとき、『野茂選手がいたから、今の日本人選手はメジャーにいけるようになった』と関口宏（だったか？）が云っていて、大リーグへの道を切り開いた開拓者（パイオニア）として、一定の評価はされていた。

かって日本の国技とも評された野球も今ではすっかりサッカーにお株を奪われてしまった。高い評価を残した野茂の野球人生は幸せなものだったに違いない。

　そういえば、去年の２０１１年に作った「矛盾」で書き忘れたが、馬場と御前崎までドライブに行った帰り、馬場が何気に『♪ＨＩＤＥ〜Ｏ、ＨＩＤＥ〜Ｏ、ＨＩＤＥＯが投げれば大丈夫〜』とディアマンテスが作った野茂の応援歌、「野茂英雄のテーマ・ＨＩＤＥ〜Ｏ」を歌ってたっけ？今、思い出した。

馬場は野茂のファンなんだろうか？気になるところだ。

　ところで最近の野茂について、何の情報もないが、何をしているのだろう？

　野球を辞めて、細々と暮らしているのだろうか？

　それとも何不自由なく、悠々自適にやっているのだろうか？

　気になる。気になる。

　　２０１２年１月１９日