お・い・て・け・ぼ・り
置いてけぼり

　　◎他のものを残したまま、その場を去ってしまうこと。置き去りにすること。「ーを食う」。
　　　◎江戸本所の堀の名。本所七不思議の一。釣りをしようと帰ろうとすると、水中から『置いてけ～』、『置いてけ～』と呼ぶ声がして、魚を返すまで云い続けたという。

　民主党の野田総理と自民党の谷垣総裁が２月２５日（土）、東京都内のホテルで極秘会談を行ったという報道が２月２９日（水）にされた。日本テレビの取材でわかったのだが、会談の内容についてはベールに包まれたままなので詳細は伝わっていない。国会の開会中であり、消費税増税と解散が論点の中心にあるので、消費税増税と解散について話し合われたのではないかと推測されている。そう推測されるのも当然の話だ。この時期、話し合うとすれば、それ以外にはないだろう。消費税増税と解散について、消費税関連法案を通してから解散したい野田民主と解散総選挙をしてから消費税をあげたい谷垣自民との間には党利党略という溝がある。だから、「消費税１０％増税」と同じことがマニフェストに書いてあってもなかなかうまくはまとまらない。日本の政治とはだいだいがこんなもので、書いてあることが同じでも集団指導体制で決定するなので、決めるのにかなり時間がかかってしまう。

一方、世界はどうか？２０１２年は韓国・台湾・ロシア・アメリカで大統領選挙がある年。とくにアメリカ大統領選は結果によっては米軍基地の移転問題やＴＰＰなど日本の政治を大きく左右するので日本でも興味深く注目されていて、今年に入ってから、日本テレビの「情報ライブミヤネ屋」などでよくアメリカ大統領選の特集をしている。海の向こうの話であるが、マスコミが関心を持つのは当然の話だ。が、しかし、それはともかくとして、やってることが挑戦者である共和党の争いばかりなのは一体全体、なんなんだろう？ＴＶ視聴者としては訳が分からない。

今年の１月のことだったか？２月のことだったか？いつのことだったか記憶が定かではないが、そのときもアメリカの大統領選について、「ミヤネ屋」でやっていて、共和党の候補者が演説しているシーンなどがＤＴＲで流されていた。それを観終わったあと、司会者の宮根誠司がよくわからない表情で『共和党の候補者選びの争いやってたんですか？』といい、『誰と誰が争ってるんですか？』と傍らにいたアメリカの大統領選に詳しい解説者に聞いた。『ロムニーさんとサントラムさんの争いです』と答える解説者。一方、挑戦を受けるオバマ大統領はいうと顔写真だけで、『民主党はオバマ大統領で決まってます。現職ですから』というだけで終わり。

　ついこの間、３月７日（水）は時差のあるアメリカでは３月６日の火曜日で、大統領予備選挙であるスーパー・チューズデーにあたる日。それゆえ、大統領予備選の特集をやっていたのだが、内容はいうと大統領選のネガティブ・キャンペーンについてで、サムトラム陣営のＣＭが紹介されていた。どんなＣＭかというとロムニー候補のそっくりさんが泥のでる銃を持って、サントラム候補に見立てた標的を打ちまくるが、いっこうに当たらないというＣＭ。そのタイトルはなんと「ランボー」をもじった「ロンボー」。『ミット・ロムニーのネガティブ攻撃マシーンがやってきた』というナレーションで始まり、『ロムニーの銃口からリック・サントラムに発射されるのは泥』、『ロムニーとスーパーＰＡＣ（支援団体）陣営は２千万ドル投じて、他の共和党候補を無情に攻撃してきた』、『ロムニーは大きな政府のロムニーケアーや雇用を抹殺するキャップ・アンド・トレード制度を隠そうとしている』と続く。泥が詰まり、それを取ろうとすると銃が暴発。泥まみれになるロンボー。『ロムニーの攻撃は裏目に出た』というナレーションでＣＭを締めくくる。このときも『共和党の争いですか？』とか、『なんでこんなネガティブ・キャンペーンするんですか？』とかいうだけでとくに笑いもなく、オバマ大統領の扱いはどうかいうとやはりものいわぬ写真だけの登場で、前回同様、解説者は『民主党はオバマ大統領で決まってますから』と述べるだけ。

実際のところ、現職の大統領オバマさんはアメリカの政治について、それらしいことは何も語ってないのかも知れない。だが、『オバマ大統領の政策はどうたらこうたらで、この３年間はどうたらこうたらで、こうこうこう主張している』といった話が一切ないのは筆者から観ればあまりにも片手落ちとしか思えない。

まるでおいてけぼりにでもされている感じだ。

２００８年１１月、オバマ氏が大統領に当選し、２００９年１月、大統領に就任した、あの頃の熱気・熱狂は一体、どこへ行ってしまったのか？たしかに日本同様、不況からなかなか抜け出せないアメリカではオバマ大統領の支持率は当初に比べてだいぶ下がっている。だからといって、共和党の候補者争いばかり大きく扱って、一体、どうしようというのか？

　その感覚がぜんぜん理解できない。

日本では極秘会談、アメリカではネガティブ・キャンペーンと政治の世界は庶民には理解しがたいことばかり。日本では首相公選制を掲げる大阪維新の会が一大勢力になる可能性がかなりあり、それにみんなの党が賛同したりしているが、選挙相手の攻撃ばかりを続けている今の政治では首相公選制もありなんじゃないのと思ったりもする。

　あまり馬鹿な争いばかりしているとそのうち、有権者からこんなことを云われるに違いない。

　政権交代の成果を『置いてけ～！』。

　　２０１２年３月９日